第1章

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『目を開けると、そこには目を疑わずにはいられない光景が広がっていた。見慣れない景色、見慣れない街並み、そして見慣れない人々。山に囲まれ煉瓦造りの家々が立ち並ぶこの場所は、あたかもヨーロッパに来ているかのようだ。しかし、ここはヨーロッパではない。ついでに言えば地球にある国ですらない。僕だってヨーロッパの街だと信じていた‥‥‥そこらじゅうを闊歩する者が人間だったならば。彼ら、彼女らは、一見して人間ではないことが分かる。なぜなら、耳を頭に付けている者や、尻尾を尻に携えている者など、人間ではありえない姿をしている者ばかりだったからだ。  ‥‥‥もうお分かりだろうか?そう、僕は異世界に来てしまったのだ。』  ===== ===== ===== ===== ===== ===== ===== ===== ===== ===== ===== ===== ===== ===== ===== ===== ===== ===== 「はあぁぁぁー‥‥‥」  主人公が物語上で異世界に着いた冒頭部分を読み終えた俺は、ある悩みを抱えていた。 「いーなぁ異世界。俺も異世界に行きたい!」  そう、俺は異世界に行きたいのだ!  昨今は、手軽に読めるライトノベル小説、略して『ラノベ』なる物が多く世に出回っている。その中でも、非日常なその設定から多くの支持者を集めているのが、『異世界』を題材にした作品である。魔法を使ったり、モンスターを倒したり、可愛い女の子とキャッキャウフフしたりする(?)その世界は、まさに夢の世界!これが現実になったら‥‥‥なんて考える人も大勢いるだろう。  しかし、残念なことに異世界などこの世には存在しない。‥‥‥いや、『異』世界なんだからこの世に存在しないのは当たり前のことなんだけど、『異』世界自体が存在しないのだ。 (‥‥‥まぁ存在しないからこそ、書いたり、読んだり、想像したりするのが面白いんだけどな)  ラノベの続きを読む前に顔を洗うために洗面台の前に足を進める。 「でも、やっぱり異世界、行ってみたいなぁ‥‥‥」  ピカーッ 「‥‥‥え?」  何が起きたかというと、ちょうど鏡の前まで来てそう呟いた瞬間、鏡が猛烈に光りだしたのだ。  ピカーッ 「えぇ?」  ピカーッ 「‥‥‥なんじゃこりゃあぁぁーーー????」
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