1.目覚めし断罪者は

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放課後の教室に響く、大きな声が俺の耳に入った。 それも、俺を呼ぶ一際大きい声だから、こちらとしては恥ずかしい。 「紅月(アカツキ)ってばー、さっきから読んでるのに無視かよー。俺、悲しくなっちゃうよ」 「あっそ、勝手に悲しんどけ。でもって、うるさいから黙れよ」 「やーだね、黙ってやるもんか」 そう言って一人で、ぺらぺらとどうでもいいことを喋るこいつは、本條真(ホンジョウ シン)。 茶髪に黒い瞳をした、若干チャラさを感じるような、お調子者。 こいつは、誰が相手でも、いつもこうだ。 俺は手を動かしながら、一応話に耳を傾ける。 すると、こいつはある単語を発した。 「あのさー、昨日断悪(ダンアク)が出たらしーぜ?」 断悪……人ならざる力、いわゆる異能を持ち、魔界に生きるモノを従える人間。 だがこれは、あくまでも噂話であって、本当がどうかなんてのは知らない。 「何してんだ、二人とも」 突然後ろから声がしたと思えば、見知った顔が立っていた。 黒髪の少し長い髪に、黒い瞳。 クールな印象を与えるこいつは、谷本静(タニモト シズカ)。 「おっ、静!あのさあのさ、昨日断悪が出たんだってさ!一度でいいから、俺あってみてーよ」 「……俺は別に、興味ないぞ?」 「ひどっ、そこはのってくれよ!」 この二人を見ているのは、面白い。 アホな真に、天然な静。 こいつらとは、小学校の頃からの、幼馴染だ。 白髪に紅い瞳で目立っていた俺の傍には、人は良りたがらず、あいつがいなくなって以来、ずっと一人だった学校生活で、話しかけてくれたのがこの二人。 「さてと、俺帰るわ」 外から、5時を知らせる教会の鐘が鳴っているのを聞き、俺はそう告げた。 今日は6時からセールだから、それまでにスーパーに行かないといけない。 「そういえば俺……日誌取りに来たんだった」 「そういや今日、静は日直だったな。ぁ、そういや俺も、担任に呼ばれてるんだったな。しゃーない、行ってくるか」 二人とも、それぞれの用事を思い出したらしい。 「んじゃ、また明日な紅月!」 「明日は期待してる」 「おう、じゃーな二人とも」 二人が俺に背を向けて職員室に向かうのを見送り、俺もスーパーへ向かうべく、その場を後にした。 明日は弓道の試合だ。 睡眠はしっかりとりたい……。 ぁ、でもその前に晩飯作らないと、優ちゃんにどやされるか。
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