1.目覚めし断罪者は

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あの化け物はどこに行ったのか、と。 「次は殺す」 少女は顔に似合わず、鋭い目で、物騒なことを口走る。 せっかくのきれいな顔が、台無しだ。 今思えば、俺はとんでもないことに、巻き込まれている気がした。 なにしろ、俺の勘が当たっていれば、この人たちは断悪なわけだ。 断悪なんてものは、そうそうに見れるわけではない。 「ねぇ、俺いそいでるから、もう行くよ?助けてくれてありがとね」 「ちょっとまって!?」 「……何?あぁ、もしかして断悪の人は、金でもとるの?」 「やっぱり、断悪ってばれちゃうよね。あぁ、でもお金なんてとらないから!  僕が呼び止めたのは、君の名前を教えてもらえないかと思って。  僕は青道悠介(アオミチ ユウスケ)、こっちの子は氷瀬鈴華(ヒョウセ リンカ)ちゃん、よろしくね」 悠介と名乗った男は、人当たりのよさそうな笑顔でそういった。 うさん臭さのない、少しお節介そうなおじさん、と言った所かな。 「…紅月恭蛾(アカツキ キョウガ)、よろしく。んで、そっちの子の紹介はなし?」 ふと、宙に漂う、鈴華に似た少女に目をやった。 鈴華とは違い、妙に、大人っぽい笑顔を見せる少女だと思う。 「フフッ、私は氷瀬蘭華(ヒョウセ ランカ)。鈴華の死んだ姉で、魔界に住まうもの。よろしくね……断罪者(ジャッジメント)くん?」 その瞬間、自分の表情が、凍りつくのが分かった。 鋭い目を、俺は蘭華に向け、言い放った。 「どこで、その名を知ったかはしんねーけど、そのこと誰かにばらしたら、ただじゃおかねーから。じゃぁな、断悪の方々」 俺はそういって、背を向けその場を去った。 なぜあいつは、あの名を知っているのか。 表の人間が、“アレ”を知るはずもない。 それとも……あの女が、魔物だからか? とりあえず……今日はつくづく、運がないらしい。
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