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あの化け物はどこに行ったのか、と。
「次は殺す」
少女は顔に似合わず、鋭い目で、物騒なことを口走る。
せっかくのきれいな顔が、台無しだ。
今思えば、俺はとんでもないことに、巻き込まれている気がした。
なにしろ、俺の勘が当たっていれば、この人たちは断悪なわけだ。
断悪なんてものは、そうそうに見れるわけではない。
「ねぇ、俺いそいでるから、もう行くよ?助けてくれてありがとね」
「ちょっとまって!?」
「……何?あぁ、もしかして断悪の人は、金でもとるの?」
「やっぱり、断悪ってばれちゃうよね。あぁ、でもお金なんてとらないから!
僕が呼び止めたのは、君の名前を教えてもらえないかと思って。
僕は青道悠介、こっちの子は氷瀬鈴華ちゃん、よろしくね」
悠介と名乗った男は、人当たりのよさそうな笑顔でそういった。
うさん臭さのない、少しお節介そうなおじさん、と言った所かな。
「…紅月恭蛾、よろしく。んで、そっちの子の紹介はなし?」
ふと、宙に漂う、鈴華に似た少女に目をやった。
鈴華とは違い、妙に、大人っぽい笑顔を見せる少女だと思う。
「フフッ、私は氷瀬蘭華。鈴華の死んだ姉で、魔界に住まうもの。よろしくね……断罪者くん?」
その瞬間、自分の表情が、凍りつくのが分かった。
鋭い目を、俺は蘭華に向け、言い放った。
「どこで、その名を知ったかはしんねーけど、そのこと誰かにばらしたら、ただじゃおかねーから。じゃぁな、断悪の方々」
俺はそういって、背を向けその場を去った。
なぜあいつは、あの名を知っているのか。
表の人間が、“アレ”を知るはずもない。
それとも……あの女が、魔物だからか?
とりあえず……今日はつくづく、運がないらしい。
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