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「真」
「あ……か……つき」
「大丈夫だ、真。俺が……助けてやる」
赤く染まる首元を見れば、その傷はすでに、致命傷となっていた。
血なんて慣れてるのに、真の血に____手が震えた。
真を静にあずけ、俺は殺気とともに、化け物に向き直る。
抑えきれない。
友達を、親友を、幼馴染を、真を傷つけた化け物と
それを防げなかった、自分が許せなかった。
何度大切なものを失えばいい?
何度守りきれずにいればいい?
何のために____強くなったんだ。
まだ……強さが足りないとでもいうのか?
「殺す」
無意識につぶやく俺に、悠介の声が聞こえた。
「だめだ恭くん!力のない君じゃ、そいつは倒せない!」
「お前に、指図される云われはない。俺はこいつを……殺す!!!!!」
ふつふつとわきあがる殺気。
今の俺は……俺ですら止められない。
「紅月!」
「大丈夫……静は真の手、握っててあげて?」
「あ……ぁ」
無理して笑って、静を見れば、静も無理して返してきた。
俺は刀を握りなおし、化け物に正面から突っ込む。
「姉さん、彼は勝てる?」
「あら?興味があるのかしら?」
「別にないわ」
「ふふ、素直じゃないわね。____鈴華、手を出さずに見ていなさい。そうすれば……目覚めるわ」
「目覚める?」
失うのは…もう嫌だ。
俺がしてやれることは、なんだろ。
いや、俺がしてやれることなんて、一つしかない。
この力を……真の為に奮うだけだ。
「右腕……足……腹……背中……」
次々と俺は、斬りつけていく。
周りからは、手慣れたように見えても仕方がない。
ほんとはもっと、痛めつけてやりたい。
でもその時間も無駄だ。
何より……もう怒りが抑えられない。
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