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「はい、ありがとうございます」
「まいど」
女の人はぺこりと頭を下げてお店をあとにしました。
店主はふぅっとため息をつくと、カウンターの奥、
自分の家に繋がる小上がりに座り、眼鏡をかけ、
新聞を読み始めました。
ここは『風鈴街風鈴町』という名前の商店街。
の、中にある和菓子屋です。
との外側にあるのれんには、梅の花と「鈴」の文字が描かれています。
ここは和菓子屋「鈴-りん-」
そして
「にゃーん」
「おお、鈴はこたつが好きだなぁ。猫はこたつが丸くなるってな。」
わたしの名前も「鈴(りん)」です。
去年の冬、店主に拾われてから店主の家で暮らしています。
お店の時計がボーンと鳴りました。
十二時です。
店主は一度のれんを下げ、お昼休憩を取ります。
わたしのお昼ご飯は店主特製のねこまんまです。
お昼が終わると店主はまたお菓子を作ります。
平日の木曜日です。
午前は一人、多くて三人程のお客が来ますが、
夕方になるとわっと人が増えます。
お迎え帰りのお母さんや学校帰りの学生さん。
また、お散歩がてらのおばあちゃんおじいちゃん。
とにかくたくさんの人が来ます。
だから店主は作ります。
お昼を食べ終えてから三時までのおよそ二時間二十分。
店主はお客さんが大好きです。
そしてこのお店、この街が大好きです。
そんな店主がわたしは大好きなんです。
少しだけ。
雪が少しだけ弱くなりました。
お散歩にでも行きましょうか。
「おや鈴、どこか行くのかい?行ってらっしゃい」
「にゃーん」
いってきます。
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