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高校を卒業してから6年、俺達も24歳になった。時の流れの速さに多少驚きつつも、久しぶりに合う顔ぶれを懐かしく思った。
「なんか彰人がスーツ着てると違和感があるな」
「ホントホント。高校の時は俺達とバカばっかりやってたからなぁ。そんな奴でもちゃんと仕事してるんだもんな」
会社から直行してきた俺のスーツ姿を見て、周りの奴らが笑いながら言ってきた。
「これでも営業部ではトップの売上を上げてるんだからな。お前らとはデキが違うんだよ」
そんな風に返しつつ、俺は当時の友人達とのやり取りを楽しんでいた。
「彰人は何飲む?ビールで良いの?」
ふと、後ろから声をかけられ、俺は振り返った。
その瞬間、一瞬だけだったけど、胸の辺りがドクンと小さく脈を打ったことに、俺は気付いた。
「…音羽」
無意識に、俺は彼女の名前を呼んだ。
当時腰ほどまであった長い黒髪は、今は少し茶色に染まっていて、肩にかかるほどまで短くなり、毛先だけパーマをかけている。軽く化粧をしていて、それがまた大人っぽくなったと感じられる。
だけど、彼女の明るい笑顔は、相変わらず変わっていない。
「…彰人?」
俺が何も答えないことに、彼女が首を傾げながら再び声をかけてきた。
「え?ああ、うん!ビールで」
俺が慌てて答えると、音羽は手に持っていたビール瓶を見せるように軽く持ち上げた。
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