心の奥深く、鍵をかけて

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「じゃあ、はい!コップ持って」 「ああ…うん…」 彼女にそう言われ、俺は自分の目の前にあったコップを手に持つ。そのコップに、音羽はゆっくりとビールを注いでいった。その間、俺は黙ってその様子を見つめていた。 前はいつも隣りにいて、一緒に成長していたのに、しばらく会わない間に大人になっていた彼女に、少し落ち着かない。 そんなことを考えていると、彼女の左手の薬指に光る物があることに、俺は気付いた。 ダイヤがあしらわれた綺麗な指輪。 再び、俺の鼓動がドクンと脈を打った。 「…彰人?どうかした?」 ビールを注ぎ終えても反応が無い俺に、彼女は再び尋ねた。 「あ、いや…ありがとう」 俺は慌ててお礼を言うと、彼女は「どういたしまして」と笑顔で答えた。 「…久しぶり、だね」 「…ああ」 それだけ交わすと、俺達は黙ってしまった。話したいことはいろいろあるのに、言葉がうまく出てこない。 「…あの、さ…」 俺は意を決し、彼女に言葉を投げかけた。 その時、遠くから音羽を呼ぶ声が聞こえてきた。 「ごめん、また後でね」 「…ああ」 そう言うと、音羽は俺から離れ、呼ばれた別の席へと行ってしまった。 「河合(かわい)、結婚するらしいぞ」     
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