心の奥深く、鍵をかけて

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その言葉に、俺は音羽を追っていた視線を隣りの友人へと移した。 「そうそう。彰人が来る前に言ってたんだよ。お前、聞いてないのか?」 「…いや」 そう尋ねられ、俺は短く答えた。 「逢坂(おおさか)って覚えてるか?今日は来てないんだけど、大学時代に付き合ってたんだと。それでそのまま結婚」 「いやぁ~、でも同級生が結婚って聞くと、なんか年取ったって感じするなぁ~」 そんなことを言いながら、友人達は笑い合っている横で、俺は1人、手元のビールが入ったグラスを見つめた。 河合音羽(かわいおとは)。 小さい頃からずっと一緒だった、いわゆる幼馴染というやつだ。 昔から明るく元気な女の子で、周りにはいつも人がいた。 また姉御気質のせいか、俺も口うるさく些細なことでよく注意されていた。 当時は煩わしいと思うこともあったが、そんなふうに彼女と話せることを嬉しいとも思っていた。 忘れもしない。 俺の、初恋の女性。 告白しようと思ったこともあった。 だけど、昔からお互いつまらない事で言い合いをしていたため、言うタイミングを見つけることができなかった。 何より、幼馴染という関係が壊れてしまうことが、俺は怖かった。 もし彼女が俺をそういうふうに思っていなかったら、もう話すことができなくなるのではないか。     
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