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葬儀の真っただ中。
私の両親は、老婆の家の敷地の外で、私のことを探していた。
「もう!!どこへ行っていたの!?」
母が、私のもとに走り寄ってくる。
「まったく……なんだその恰好は。どうして大人しくついてこなかったんだ……」
その後ろで、あきれ顔の父。
しかし、私はそれどころではなかった。
一刻も早く、老婆に木の実を食べさせたかった。
「お父さん、お母さん……ごめんなさい!!」
私は両親の間をすり抜け、老婆の家へ向かった。
初めて訪れた老婆の家。
大きな平家。
少しだけ古い、そんな香りのする畳。
「いらっしゃい……来てくれて、ありがとうね。」
きれいな女の人が、私を迎えてくれた。
「こんにちは。……あの、ばーちゃんは?」
普段は人見知りな私も、この時ばかりは勇気をもって、話しかけた。
「……こっちよ。最期のの挨拶、してあげてね。」
『最期の』
この言葉を発した時、目の前の女の人の表情が一気に曇った、そんな気がした。
手を引かれるまま奥の間へ向かう私。
そして。
きれいに飾られた和室。
中央に置かれた大きな箱の中に……。
優しく微笑んでくれた、あの老婆が眠っていた。
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