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父のその言葉から……
私はどのように帰って、どのように次の日を迎えたかを覚えていない。
ひとつだけ、おぼろげに覚えているのは……
私が、人生で初めて、一晩中泣いたこと。
家族でもない。
知り合って長いわけでもない。
そんな老婆の死が。
私にとって、この上なく悲しい出来事であったことは、今でもはっきりと覚えている。
次の日も、また次の日も……
私は、行きつけ『だった』駄菓子屋に通った。
主のいない駄菓子屋は、日を追うごとにくすんで寂れていった。
いつしか、『駄菓子屋』の看板は外され、きれいに塗られていた塗装も色あせていった。
そうして、私もはっきりと自覚したのだ。
ーーー老婆は、もうこの店には帰ってこないのだ、と。---
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