17人が本棚に入れています
本棚に追加
「ボンボン!!ボール!!」
翌日。
変わらずクラスメイトからの声が私に飛ぶ。
足元に転がるボール。
昨日までの私なら、クラスメイトの言葉にむやみに腹を立て、無視して立ち去ったに違いない。
ーーー勇者は、本当にひとりで悪者と戦ったのかい?---
しかし、私にはあの老婆の言葉がずっと、頭にこびりついていたのだ。
大声を発したクラスメイトの少年の足元に向かって、そっとボールを蹴り返す。
「お……サンキュ……」
少年も、今回の私の行動に驚いたらしい。
悪態を準備していたその口が、たどたどしく感謝の言葉を口にした。
(勇者は……どうやって仲間を作った……?)
僕は、考えた。
「ね、ねぇ……僕も、混ぜてくれない?」
勇者は、名も知らぬ戦士とともにクエストを乗り越え、そして仲間を得た。
「おう……しかたねぇな。じゃぁこっちのチームに入れよ!ひとり少なくて困ってたんだ!」
少年は少しだけ照れくさそうに、それでも断らずに私を受け入れてくれた。
別に、勇者じゃなくてもよかった。
人との心の壁を取り払うのは、相手を受け入れる寛容な心と、少しばかりの勇気で充分だったのだ。
老婆の言葉が、それを私に教えてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!