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疲れ果てるまで遊んだ私は、結局ボロボロになり、泥だらけになる。
そして帰り道、いつもの駄菓子屋に寄った。
「あらあら……またひとりで戦ったのかい?」
奥から顔を出した老婆は、仕方ないね……と呟きながら私に近づいてくる。
「違うよ!!今日はみんなで遊んできたんだ!ドッジボールしてきたんだ!!」
老婆の言葉をただ否定しただけなのに、なぜだか誇らしげになってしまう私がそこにはいた。
老婆は、そんな私の言葉に一瞬、驚いた表情を見せたが……
「あらあら……そうかいそうかい、それは良かったねぇ……」
と、すぐに満面の笑みで私の頭を撫でた。
「ちょっ……やめてよー」
あまりに嬉しそうに、髪がぐしゃぐしゃになるほど頭を撫でるものだから、私は少し恥ずかしくなって身を逸らした。
「当たり前のことだよ、友達を作ることなんて……」
言いかけて、ハッとした。
転校という、受け入れたくなかった現実を理由に、私は『当たり前のこと』すら見失っていたことに気が付いた。
それを、教えてくれたのは……
「そうかい、それもそうだ。でも、これからの毎日が、少しだけ楽しくなるね。……今度は友達も連れてきな。」
目の前でくしゃくしゃの顔で笑う老婆。まるで自分のことのように喜ぶその顔に……
「……ありがと。」
私は小さく呟いた。
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