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言われるがまま店内に入るとそこには...
数人の顔が整った男がいて、胸元を開けたシャツにスーツ姿、明るい髪は緩くパーマをかけていたり盛り髪をしていたり...
店の内装はいくつかのボックス席とバーカウンターがありバーカウンターの棚には高そうなお酒のボトルがズラリと並んでいた。
ぶつかった看板を見た時まさかとは思ったけどやっぱり...俺がぶつかったのはホストクラブの看板だったのだ。
「おい、キョロキョロしてると転けるぞ。」
「え、あ、はい」
キョロキョロと店内を見ながら歩く俺にそう言うと、聞こえるか聞こえないかぐらいの声でサラッと、これ以上弁償する物増やしたくないだろうしな...っと言った金髪男の言葉に、驚く前にそこに座れと先にドカッとボックス席のソファーに座った男の正面の席を指さされ、はい...と小さく返事をして座るしかなかった。
「で、お前今バイトは?」
「してないですけど...」
つい数週間前、俺がバイトしていた居酒屋の店長が腰痛が悪化したとかでしばらく店を閉めるからその間バイトは休みという事で...と、言われたばかりで。1人暮らしの学生の俺としては収入がないのは痛い...。だから居酒屋が休みの間、短期でできるバイトを探している最中だったのだ。
「よし!じゃーお前とりあえず明日から18時に出勤で。」
「え、ちょ、どういう事ですか?!! 」
「どうもこうもお前今バイトしてないんだろ?じゃーここで働け。」
この男のとんでもない提案に俺は目玉が飛び出そうになった。
「ここで働けって...俺、そんなホストなんてできません!!」
「じゃー、80万」
「へ?」
「看板の弁償代だよ。80万。明日までに持ってこい。」
「そ、そんなお金あるわけないじゃないですか!!」
看板の弁償代を聞いて再び目玉が飛び出そうになったのは言うまでもないだろう...は、80万って...。そんな金、貧乏暮らしの学生の俺にあるはずが無い。
そう言うと...
「あ゛ぁ?てめぇ、どっちもできねーで通用すると思ってんのか?」
「ひぃ...」
物凄い剣幕に再び地を這うような恐ろしい声...胸ぐらを掴まれて綺麗な顔が迫ってきて物凄い迫力に情けない声が漏れた。
あぁで本当に今日はなんてついてない日なんだ...
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