月屋本舗

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 ふっと体が軽くなり、倦怠感が遠のく。  目を見開くと、急激に体の感覚が戻って来た。頭の片隅だけが、少しぼんやりしている。 「いかがでしたか?」 「白い、デカ猫が……」  両手を握ったり開いたりして、猫を思い出す。毛が長くて、艶々してて、やわらかかった。ぐにゃぐにゃで、とても熱かった。 「かわいかった」 「それはよかったです」  立ち上がると、体が軽かった。こんなにも爽やかな目覚めは久しぶりだった。 「オレはどのくらい眠ってたんだ?」 「15分程度です」 「15分? ウソだ。あんなに長いこと、うとうとしてたのに」 「そういうものです」  店主が部室のドアを開けた。最初の部屋に戻る。 「オレの記憶は……」 「眠っている間に頂戴しました。すいません。今日はこれで店じまいなのです」 「あ、あの、また来ても? この店、気に入ってしまって……」  店主が重い鞄をオレに返し、入口のドアを開ける。 「またのお越しをお待ちしております」
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