いずみ

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老夫婦が桜の木を見上げて何かを話している。 その顔には、懐かしさと幸福感がない交ぜになった表情が浮かんでいる。 二人の顔にある皺は、その一本一本に過去の様々な出来事が深く刻まれているかようだ。 彼らは、このピンク色の花が咲く季節に出会ったのだろうか。 そして、1年に1回の恒例行事として、この花を見ては出会いを思い返し、彼らの古い思い出が色あせないように、ピンク色で毎年染め直しているのかもしれない。 疑問は沸くが、興味はあまりない。 私は耳の裏がかゆい。 耳の裏をポリポリとかいてみる。 かゆみが徐々におさまってくる。
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