プロローグ

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彼女がまだ生きていたとして、彼女がまだ日本の何処かにいたとして、まだ彼女は夢を追い続けているだろうか。 しかし彼女が何処に居たとしても、まだ夢を追い続けていたとしても、今の僕には関係ないことである。 幾ら考えたところで時間が経過していくだけだと結論に行きつくと彼女の事ばかり考えてしまう自分が嫌になり、発泡酒を口に流し込む。 この繰り返しが、僕の意識の続く限り続いてゆく。 「バンドブームですね、スリーマンズも今や知らない人はいないと言っても過言でない程の人気。私もファンの一人です。」 テレビの中の、口が達者な司会者が若い三人のバンドマンと喋っていた。 スリーマンズは最近嫌でも耳にするバンドで、キャッチーなメロディーが一般にウケている。僕も嫌いというわけではないが、売れているバンド自体に嫉妬を抱くため到底好きにはなれない。 初めてメンバーを見たが、本当にロックバンドなのかと疑うほど全員華奢な身体つきをしていた。 「こんなに売れるとは思いませんでした。」 中心に座ったおそらくリーダーである男が言った。     
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