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柔らかな日差しにヌクヌクと温められて、ボンヤリと彼が何かをしているのを見ているのが、とても楽しくて幸せだったから。
「無理にとまでは言わねぇけど、退屈じゃねぇの?」
「いえ、まったく。こうして、あなたが石を投げているところを眺めているだけで、楽しいです。」
ニッコリ笑ってそんなことを言うエリカに何を思ったのか、わずかに頬を染めたラファエルがフンと鼻を鳴らして、それでもそれ以上彼女に無理強いすることなく、彼女の手から小石を取り上げた。
どうやら満更ではなかったらしい。
先程よりも力を入れて、湖へと石を投げ出す。
「昔……。」
「はい?」
「ガキの頃な。エーミールの実家の領地、お前んとこの領地があるところとはまた別の地域だが、そこの祭りで、石投げの競技に参加したことがあるんだよ。」
「へぇっ。」
川や湖、水や石ある場所ならどこででも、わりによくある競技だ。
エリカの領地には湖はないが、それでも近くの森には、それほど大きくはなくても川があったから、石投げ自体は彼女もやったことがある。
ただ投げるだけに思えても、飛距離を出すにはそれなりにコツがあって、なかなか難しいことは彼女も知っていた。
「ラファエルは、とてもお上手ですから、もしかして、優勝とか準優勝とか、何か賞をとられたんじゃないですか?」
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