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「ああ、お前も知ってんだろ?マティアス。昔から、俺は、同い年のあいつに今一歩で勝てねぇんだよな。」
「さってと、ソロソロ帰るか。」
高かった日も、いつの間にか中天を外れ、そろそろ肌寒さを感じる頃合になっていた。
「あ。」
ラファエルが放して自由にさせていた馬を呼び寄せるために、彼女のそばから離れてゆくのをなんとなく見守って、ふと木々の合間、生い茂った葉の隙間から、色鮮やかな小鳥が顔を覗かせているのにエリカは気づいた。
「どうした?」
馬の轡を引いて戻ってきたラファエルを振り返って、鳥の方を指差す。
「とても可愛らしい小鳥が。」
「ああ、パパガイ(※オウム)だな。この辺じゃ珍しいが、アトリウムから逃げ出したヤツかもな。」
「温室のって、南国の鳥ってことですよね?逃げ出してしまって、生きてゆけるのですか?」
「どうだかな。」
肩を竦めたラファエルは、あまり関心がなさそうだ。
もし、死んでしまうようなら可哀想だが、自ら逃げ出して野性化してしまったものを、どうにかしてやることなどできはしない。
(しょうがない、か。)
「あれも教えれば、けっこう人間の言葉を憶えるらしいぜ?」
「え?そうなんですか?」
「ああ、けっこう達者に喋るみたいだな。」
「へっえ~っ。」
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