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そっとラファエルの上着を掴み、小さく声をかけたエリカに、ラファエルが小さくチラリと口角を上げて大丈夫だというように答える。
そんな二人の背後から、その場の雰囲気にそぐわぬ明るい軽い口調で、マティアスがラファエルを呼び止めた。
「一つ、貸しだから。」
「…………。」
「辺境でもどこへでも行けばいい、私が呼ぶまでは。でも、私が戻って来いと呼んだ時には戻っておいで?」
「たかが、一度の貸しで、この俺を死ぬまで扱き使おうってか?」
おどろおどろしい声音での反論に、マティアスが皮肉に笑う。
「死にたくなければ?野に放たれた王族なんて、誰にとっても毒でしかない。私はけっこうお前が気に入っている。少なくても、他の兄弟たちよりはよほどね。でも、私の味方にならないなら、生かしてはおけないからさ。」
「……行くぞ。」
今度こそ、ラファエルはエリカを連れ、部屋を出た。
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