06.情熱の不在

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 『殿下はよろしくても、エリカ様はどうでしょう?ただでさえ、遠路遥々旅をして来られて、疲労が蓄積している時にお風邪でも召された日には、お身体を壊されて思わぬ重病を得てしまうかもしれません。』  言葉尻は丁寧だったが、さすがに乳兄弟というだけあってかなりラファエルにも遠慮ない物言いをできる女性らしく、ラファエル自身も他の使用人たちに対するように一方的に命令するだけではなく、クリスタを尊重しているのが察せられた。  また、クリスタだけではなく、エリカをこの私邸まで連れてきたラファエルの乳兄弟だという親衛隊長にも警備上の理由で反対されたこともあって、結局、ラファエルが折れた。   『ま、たしかに今じゃなきゃ、ダメって道理もねぇしな。もうちょっと、陽気のいい季節にでも泊まるか。』 と。  (少し、残念な気もするけど。)  エリカにしても、疲れた身体に鞭打ってまで、外で寝てみたいほどではない。  それに、ラファエルが言っていたように、またいつかの機会でも全然かまわないはずだ。  その頃、彼がまだエリカに関心があって、彼女の為に時間を取る気を持っていてくれるかはわからなかったけれど。  少しの間だったが、部屋に落ち着いて、ベッドに入るまでの間、フリーダと雑談することも許された。  それが、ラファエルの気遣いであったことは間違いない。     
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