鈍色の行進

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鈍色の行進

 鈍色の空が押し潰すように低く垂れこめ、今にも泣き出しそうな空気を運ぶ。  まだ青い穂を両側に見ながら、ランバートはすっきりとしない気持ちで馬に揺られていた。  場所は王都から内陸に三十キロ程度行った、ロッカーナという穀倉地帯。ここにある砦へ、演習に向かう途中だった。  色々と事件があって遅れていたランバートの所属が決まって一カ月程度。季節は徐々に秋へ向かっていく。 「それにしても、退屈な景色だな」  近くを行く同僚がそんな事を呟く。その言葉には、激しく同意だった。  穀倉地帯のこの辺りは景色的に単調だ。緩やかな道が一本続き、その両側は小麦畑。秋になれば黄金の穂が美しい季節になるのだろうが、今はまだ早い。  それに加えてこの天気だ。  夏を過ぎて不安定になった空は、気分を沈ませる色ばかりを見せる。  そのせいか、道を行く様子はどこか葬列のようでもある。黒衣というのが余計に悪いのだろう。  そう感じさせる重苦しさがある。特に、先頭をゆく二人の上官が発する空気がそのように思わせる。
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