鈍色の行進

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 事は今より一週間ほど遡る。  ランバートは第二師団の所属となり、本格的に騎士としての生活を送っていた。  幸い同僚は皆さっぱりとした人が多く、打ち解けるのは難しくなかった。特に第二師団は他の部隊と比べて人数が少ない事も幸いだ。  騎兵府第二師団。別名、遊撃部隊。  戦闘における斥候、別働、陽動、奇襲などを得意とする部隊で、比較的少数での行動が多い。身が軽く機敏、そして単騎での戦闘力に優れた隊員が好まれる。ランバートにはうってつけの部隊と言えた。  充実した騎士生活を満喫し始めた頃、僅かながら違和感を感じ始めた。  それは、ふとした時に見せるファウストの表情の疲れた様子、厳しい表情。それらが増えてきた。  何か厄介な事案を抱えたのだろうとは思った。だが、立場上あまり踏み込むことはできない。  彼は騎兵府の長で、抱える案件は多い。隊員の一人にすぎないランバートが、そう簡単に首を突っ込める相手ではない。  唯一できる事があるとすれば、プライベートに近い時に労をねぎらい、ガス抜きに付き合うくらいだった。  それに加えて、直属の上司の様子も少し前から違ってきた。  ウェイン・バークリー。第二師団を預かる、とても元気で明るい上官は皆に慕われる性格のいい人だ。  おそらく全隊員の中でも小柄で、顔立ちはやや童顔。笑った顔がひまわりみたいだと感じた。  だが、実力は当然ある。動きは俊敏で機動力があり、とにかく手数が多い。間合いが狭く不利なはずなのに、いつの間にか懐に入られて窮地に立たされる。小柄な事をコンプレックスだと言いながらも、それを一番の武器に変える。そういう凄い人だ。  そのひまわりのような笑顔が、ここ一週間は萎れて見えた。  第二師団の一年目と二年目をつれてのロッカーナ演習は、その直後に決まった事だった。
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