鈍色の行進

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「ランバート」  不意に声をかけられてそちらを向く。  そこには、ニコニコと笑うウェインがいる。薄茶色の髪を風に揺らし、大きな同色の瞳を向けてくる。けれどその瞳の奥には、不安が見えるような気がした。 「ランバートは、演習は初めてだよね?」 「はい」 「緊張とかしてない?」  馬を並べて問いかけるのは、ウェインなりの気遣いだろう。緊張や不安を取り除こうとしているのだと思う。 「緊張はあまり。どちらかと言えば、楽しみです」 「楽しみ?」  小さな頭が傾けられる。その仕草は子供のようで、年上なのに愛らしい。 「地方は王都とはまた違いますし、新しい出会いもあるでしょうから」 「ランバートって、社交的だよね。僕はちょっと苦手」  溜息をついて肩を落としたウェインに、ランバートは笑った。  ランバートも社交的なタイプとはあまり言えない。どちらかと言えば気心の知れた相手と密に関わっていくタイプだ。  だが、周囲と同調するのは得意だと思う。人間観察と、その状況に自分を合わせていく能力には長けていると思う。     
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