鈍色の行進

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 ランバートがこの演習で得るものがあるとすれば、数人の気の合う人物を見つけること。そういう相手と手紙などで連絡を取り、情報網を維持していくこと。  そこからの情報というのは、王都では得られないものがある。何より楽しい。 「もう少し気が長ければ、上手くやっていけますよ」 「うわ、はっきり言うもんだね。まぁ、長くないけれど」 「酒癖も」 「悪いですよーだ。もう、ランバートはいつもすましてて嫌なかんじ。少しは乱れたりしないの?」  ふくれっ面の事もだと思う。が、それを言ったら確実に殴られるだろう。ランバートは笑いを押し殺した。 「俺も乱れる事はありますよ。安酒をたらふく飲んで気持ち悪くて吐きっぱなしなんて時もあったし。気のいい連中と一晩中飲んで、そのまま雑魚寝とか」 「うそ! そんなの騎士になってから見た事ないよ。君の歓迎会だって、最終的には君が全部後片付けしたって」 「あの時は大変でしたよ。ウェイン様は暴れて瓶を投げるし、あちこちで先輩方は倒れてるし。ファウスト様がきてくれなかったら、俺もちょっと手をつけられませんでした」  言うと、ウェインはバツの悪い顔で笑った。 「もう少しで、到着ですね」 「…うん」  小麦畑の先に、石壁が見えてくる。高い壁の中が、目指すロッカーナの町と砦だ。     
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