復讐者の牙(ファウスト)

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 ウェインがオーソンから離れると、オーソンは前を向いて到着した面々に視線を向ける。そして、心からの歓迎を示すように笑いかけた。 「王都の皆も、よくきてくださった。わしがこのロッカーナ砦を預かるオーソンだ。皆を心から歓迎しよう」  若かりし頃を思い出させる張りのある声で歓迎を示したオーソンに、第二師団の皆が一斉に敬礼を取る。 「今日はあと数時間もすれば陽が落ちてしまう。案内を彼に任せてあるから、まずはそれぞれの部屋を決めて、簡単に砦の中を案内してもらってくれ」  オーソンが少し離れた所に立っている青年を見る。  少し緊張気味な、硬い足取り。だが瞳は真っ直ぐにこちらを見ている。第一印象は、生真面目な優等生。鳶色の短髪に、同色の瞳の青年が来訪者に一礼する。 「エドワード・ミレンです。皆さん、ようこそ」 「彼はとても優秀な隊員だ。砦の案内を頼んである。エドワード、後は頼んだよ」 「はい。それでは皆さん、こちらへ」  まずは馬屋へ向かう第二師団を見送り、ファウストはオーソンの傍につく。その時不意に視線を感じて顔を上げると、何かに気付いているようなランバートの視線とぶつかった。  聡い彼の事だ、何かしらの異変に気付いていてもおかしくはない。そういう奴を面倒と思う事もあるが、今回に関しては助けになるかもしれない。     
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