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他の隊員が砦の中を案内されている頃、ファウストとウェインは砦の執務室にいた。
その空気は今日の空と同様に重苦しく、重大な事が起こっている事が如実に分かるものだった。
「オーソン、まずは状況の説明をもう一度頼む。報告では、三カ月前から始まっているんだな?」
ソファーに腰を下ろしたファウストが、正面に座ったオーソンに問う。それに、オーソンも頷いて用意してあったファイルを手にした。
「三か月前、ロディという一年目の隊員が自殺しました。首をつっているところを明け方の巡回で発見。見つけた時には、既に亡くなっていました」
声を落としたオーソンの悔しそうな表情は胸に痛む。彼の隣に座ったウェインが、気遣わしげに肩に触れた。
「原因は分かっているか?」
ファウストの問いかけに、オーソンは力なく首を横に振る。
「遺書はありませんでしたので、彼自身の思いは分からないままです。ですが噂で、虐めがあったと聞いています」
「最低だね」
ウェインが目を吊り上げて吐き捨てる。普段笑顔の多い彼がこういう険しい表情をすると、妙に迫力がある。
ファウストも同じく頷き、眉根に皺を寄せた。胸の中は、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
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