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密かな夜会(ファウスト)
その夜、ファウストはオーソンの部屋で報告書を読み返していた。
被害者たちの細かな証言や、駆けつけた隊員の証言まで。そのどこかにヒントが無いかと探したが、そう簡単なものではなかった。
外が暗くなり、食事に出ていたオーソンに呼ばれるまで、ファウストはそうしていた。おかげで食事をとり損ねた。
「後で何か用意いたしましょうか」
「いや、構わない。風呂だけは入りたいが」
「用意しております」
ファウストの後ろにオーソンが従い、そこにウェインも合流する。
そうして自室の前に到着したのだが、ファウストは扉を開ける前に立ちどまった。
「ファウスト様?」
「…あいつ、既に勝手知ったるように忍び込んだな」
溜息まじりのその言葉に、オーソンが剣を抜こうとする。だがファウストはそれを制して、扉を開けた。
部屋の中には、微かに紅茶の良い香りがする。
そして、月光だけの中にランバートが待ち構えるようにして微笑んでいる。その不敵な顔に、ファウストは溜息をついた。
「早かったな」
「新人がお待たせするわけには参りませんので。風呂は諦めましたが」
「あとで俺と一緒に入ればいい」
そう言って部屋に入り、用意された紅茶に口をつける。
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