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その日の朝。
小鳥達の爽やかを通り越した不快な程うるさい囀りと、馬鹿みたいに吠えまくる不快な犬の鳴き声。原付バイクの『ブェ~ン』という、不快なエンジン音。そして、近所の親父が『くぁ~ペっ』と、痰を吐き散らす不快な鳴き声で俺は目覚めた。
目覚めの悪さと共に気分は最高に不快だった。
眠い目をこすりながらベッドから起き上がり、洗面所へ向かう。
コップを手に取り、蛇口から水を注いで鏡を見ながら歯を磨く。いつしか苺味の歯磨き粉を卒業した俺も、今ではすっかりメロン味に慣れてしまっていた。大人への成長を実感し、噛み締め口を濯いだ。
そしてバシャバシャと顔を洗いタオルで拭けば眠気も少しは取れる。
それが終われば部屋に戻り、櫛とヘアスプレーを手にドライヤーでヘアスタイルのセットに取りかかる。
百円ショップで買った大きな鏡をテーブルの上に自分と睨めっこ。
「酷い寝ぐせだ……」ぼそりと出た言葉。
スイッチを入れ、髪をとかして行く。
(とかしてもあまり変わらないじゃん)心の中でツッコミを入れるのが日課。
後ろ髪は外に撥ね、シルエットで見たら、まるでタコさんウィンナーみたいだ。
スプレーを吹きかけ、手櫛で馴染ませてからストレートになるように髪を引っ張る。
ドレイヤーの熱風で両サイド、前サイド、後ろサイドの髪を固めて完成。
右斜め四十五度から見る顔……完璧。
左斜め四十五度から見る顔……完璧。
正面も完璧!
完璧すぎる自分が怖く、思わず鳥肌が立った。
「ふぅ。時間も無い。行くか」
ため息混じりで壁掛け時計に目を向けて、誰も居ない部屋の空気を独り言が少し揺らす。
半袖ワイシャツにカーキ色のラッセットブラウンのチェックのズボンが制服だ。
それに着替え、黒いスニーカーを履き朝飯は食べずに2DKの古ぼけたアパートを出た。
勿論鍵は掛けて。
階段を駆け下り、錆び着いた塗炭屋根の駐輪場へ、黒色の自転車に乗って学校へと向かう。
これが俺のいつもの朝_______________________________
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