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土日祝祭日は異形魔界で戦っています
ここは、岩や草木、川までもが真っ白な大地。
湿った風が、汗ばんだ体にじっとりと纏わりついている。
この湿度には困ったもので、体力の消耗もそうだが、メットの中で天パがうねるのが何よりの問題点。
折角ヘアスプレーで外側にはねた癖毛をストレートにしたのに、台無しだ。
とっとと終わらせて、平凡な世界、平凡な生活に戻ろう。そう思う。
騒然たる戦場では、敗れ散る人の叫びや、気を奮い立たせ、勇行く戦士の哮りが離れた所から聞こえてくる。
大軍勢、生きるか死ぬかのやり取りの中、天パを気にしている場合じゃないのは確か。
まず、目の前に居る量産型を片付けないといけない。
そいつは、気味の悪い真っ黒な色をした人型機械兵器、01(ゼロワン)と呼ばれるマシーンで、大きさは2メートル前後。俺の体の何倍もある大剣を両手で引きずるように駆け寄る。
歩くたびに甲高い音が鳴り響いて、耳が痛く、神経に触る。
01が目の前で動きを止めると同時に、その甲高い音も鳴り止んだ。
そいつが姿勢を低く構えると、風を切るように大剣が大きく横に振られた。
その軌道とスピード、タイミングを計り俺は宙に舞う。
「ガシャンガシャンうるせーっ!」
俺が右手に持つ武器、それは何の変哲もない鉄の棍棒。
この世界の女王、【 リリィ ハート 】が生み出した【 黒霊石(こくれいせき) 】と呼ばれる石により具現化された棒。
コイツで01の顔を貫くと、バチバチと青色の光を放電し、崩れ落ちた。
この機械兵器を百機ぶっ壊せば俺は……。
____遠くからもこいつらの出す騒音が聞こえる。
歩き回る音、壊れる音、攻撃する音。
音だけで十分に伝わる戦いの激しさだが、不思議と俺は冷静を保っていた。
目的の為、夢を掴む事を思えば恐怖など感じない。
その夢も残り四機。
あと四機でミッションクリアだ。
この辺は殆ど壊したから、もう機械人形は居ない…………。
「それにしても見事なものですなぁ♪ 流石、リリィ様に選ばれしエージェント。間違いなくセカンドの地位に立てますなぁ。私が保証しますよ」
声の主はメットを外してニコニコとして歩み寄ってくる。
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