土日祝祭日は異形魔界で戦っています

2/8
前へ
/127ページ
次へ
ブロンズの長い髪を靡(なび)かせ、【 耐攻防増力(たいこうぼうぞうりょく)スーツ 】と呼ばれる全身コバルトブルーのスーツを身に纏、おっとりとした顔立ちの彼は、俺の肩をポンポンと軽く叩いた。 因みに俺も含め、皆この格好である。 この人の名前は【 東條(とうじょう) ハンペイタ 】発音はハンペータと伸ばしてほしい。 彼は俺のお目付け役で、案内人みたいな者とか何とか……。 戦いが始まる前に、そう説明された。 俺はメットに取り付けられたシールドをカシャッと上げる。 「東條さん。セカンドとか地位とかそんなん良いから、〝 例の件 〟忘れないで下さいよ」 と、念を押した。 東條はそのままの笑顔で。 「勿論です。約束は必ず守らせます。その為には後、四機を倒さないといけませんよ」 と俺の背中をとんと押す。 それが聞ければ満足だ。俄然やる気も出て心も躍る。 「じゃあ、急ぎましょう。夢の為に」 「はい。急ぎましょう。明るい未来の為に」 固く握手を交わした後、東條は再びメットを被った。 俺達は、新たなガシャコンマシーンを求め、ガチャガチャ聞こえる別の場所へと向かう事にした。 「いたいた♪」 北東に足を進める事、数百メートル。今まさに味方がやられそうだ。 味方と言っても、この世界に来たばかりの俺にとっては、これっぽっちの面識はない。 同じ国と言う事で、共に戦っているけど、俺とこの人達とでは根本的に戦う動機が違うのだ。 俺から言わせてもらえばこの人達はただのモブキャラだ。 今度の機械兵はさっき倒したのとは形状が若干異なり、両手が高速で回転するチェーンソ―の刃になっている。 青白く輝く一つの目が、モブキャラAを捉えている。 転んでしまったモブキャラAに気を取られている機械兵は、俺がすぐ近くまで来ている事に気付いていない。 「絶好のチャンス」 その隙に、背後から一番細い胴体部分を狙い、思い切り叩き割った。 下半身部分は仁王立ちしたままで、胴体だけがゆっくりと氷河のように崩れる。 地に落ちた手と腕と頭部は繋ぎ目からバラバラになった。 何とも気持ち良い。これは冬の季節に薄氷をパリパリと割る感じによく似ている。 「…………」 無様に尻もちをついているもぶキャラAは眼を見開いたまま茫然としていた。
/127ページ

最初のコメントを投稿しよう!

84人が本棚に入れています
本棚に追加