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保科に礼を告げ、車を降りるなりドアマンに頭を下げた沙月は、足早にホテルの自室に戻ると着替えもせずにソファに倒れ込んだ。
ゴブラン織りの生地に頬を寄せ、溢れてくる涙を何度も拭った。
その涙の意味が何なのか。今までに何度も経験してきた自分の生い立ちを恨んでの事――なのだと思っていた。
仰向けになり天井の豪華なシャンデリアを見上げる。
幾つものスワロフスキーが放つ柔らかな光を見つめているうちに、沙月はいつしか深い眠りに落ちていった。
決して口に出してはいけない一条への秘めた想いを胸に抱きながら……。
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