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__始まった
「い、いやだ……」
脱がせて欲しい。
僕はなりふり構わず自分の下着に手をかけた。けれど途端に佐野に両手首を片手で掴んで、捩じ上げられる
「なんで脱ぐの?どうせ俺が洗うんだし。もう今からどれだけ汚れても一緒でしょ」
佐野はにこりと笑って、僕に囁いた。すぐさま僕の性器をトランクスごと弄びはじめた。
「いやだ……あ……あ……っん」
萎えていた僕自身は、佐野に巧みに擦り弄られ、熱を帯びて来る。押し寄せる快感で声が漏れてしまう。
もう下着のままだろうがどうでも良い……早く出してしまいたい。多分トランクスごしでも、僕の張り詰め方は見てバレてるだろう……
佐野は見て嘲笑ってるんだろうな……
「先輩、早いね。溜まってんの?僕を避けてた間、誰かにしてもらわなかったの?」
「ヒッ!」
やっぱり佐野は冷徹な顔で、僕の袋ごと強く握った。快感の狭間の痛みで身体が飛び上がりそうになる。
「何を言って……」
痛みのせいで滲んだ視界が、佐野の冷たい笑顔も歪ませる。僕を扱く手を全く緩めないまま、佐野の薄い唇が近づき、僕に口付けた。
激しい舌で、口内をぐちゃぐちゃにかき回される。
舌を舐められながら、吸われる度に気が遠くなる。佐野の激しさが、脳に直接突き刺さるようで怖い。どろどろに溶け、口の中まで犯され、思考停止した。
でも、佐野の息づかいが直に感じられて、漸くこいつも同じ人間なんだと感じる。擦られた僕の性器は、放ちたくてはちきれそうで、もう、限界だ……
「あ、あ……佐野、もうイクっ」
「そんな事、言われなくても解ってるよ。馬鹿じゃない?先輩」
トーンの変わらない佐野の声が耳の奥でする。声の冷静さに反して、手の動きが激しくなる。冷笑されていると判っていても……
「あぁっ!」
僕は下着のままイッた。今まで震えていた身体の力が、一気に抜ける。佐野の言う通りになった。「違う」って反論したのに。
「あーあ。ホントにイッちゃったね。まだ他何にも触ってないのに。ホントに溜まってたんじゃないの?たくさん出過ぎだよ。見て、ベットリ。お漏らしした子供みたいだね」
佐野は僕の股間を見て、声を立てて笑った。僕は情けなくて、屈辱に満ちて……また馬鹿にされそうだから涙は堪え、ぎゅっと目を閉じた。
腰を上げられ、下着を一気に脱がされているのが、目を閉じていてもわかる。僕は、次に起こる事を予感し,覚悟しながら待った。けれど。
「先輩……誰ともしてなかったんだね」
チュ
僕の額で音が鳴った。恐る恐る目を開けると……驚いた。
佐野が、僕の汗ばんだ額の髪を掻き上げて、キスをしていた。
霞んだ瞳に映った佐野の表情は、ボロボロになった心が、救われるような優しい表情で。
(こんな佐野、見た事無い。幻だろうか)
確かめようとした途端、佐野は僕から離れた。体温と重みが一気に消え、身体が軽い。
「あー楽し。これ洗って来る」
そう言うと佐野は僕の服を持って、自身の前を張り詰めさせたまま、部屋を出て行った。
下半身の脈打つ激しさが鼓動に同調したまま、僕は逃げ出しも出来ないで、ベッドに横たわったまま動けもしない。
窓の外は、星が出ていた。……雨は、もう降りそうにない。
-おしまい-
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