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イヤフォンの音漏れより小さな声で、僕の耳元で言い放った。
瞳は楽しそうに爛々と笑っているのに、佐野は「本気で怒った」と言った。何を考えているのか判らない。
暫く忘れていた訳の分らない佐野への恐怖が、僕によみがえる
佐野の右手がとうとう僕のモノを掴んだ。全身が粟立つ。
もう、どうしようもない。
佐野の手が僕の張った形を辿り、先端を見つけられ、布越しだけれど爪を立てられた。痛みと快感が同時に信じられない大きさで襲う。
「いっ!」
しゃくりあげた息と共に声を出してしまった。僕の心臓は身体ごと跳ね上がる、滲んだ視界でうっすらと佐野の喉が動くのが見えた。
満足げな佐野の器用な指で、後ろも前も衝かれて,扱かれて……頭が真っ白になる。自分が今どういう状態かなんて、冷静に何も考えられない。
声だけは、声だけは出せない。
けど、電車の騒音も,人の圧迫感も,羞恥心も消えてしまいそうだ。唯一の支えの手すりを掴んでいる掌は、汗が滲み出てするする滑ってしまう。
もう、快感だけが僕を支配して、こんな意地悪な手で。佐野……
激しかった列車の揺れが、小さくなっていた。佐野の手が止まった事で僕は漸く気が付いた。速度が落ち駅が見えてきた頃、やっと朦朧とした頭で停車する事が理解できた。
佐野から解放され、ぼんやりと窓を眺めた。
(窓の雫が消えている……)
「具合悪い?大丈夫ですか?」
周りの人は佐野の言葉を聞いて,僕の様子を見て、体調を崩したと思ったのか心配そうに一瞥をくれる。僕は本当の意味を知られたくなくて、下を向くしかなかった。
足腰の力が抜け、ふらつく僕を
「出ましょうね」
佐野はドアが開くなり、外に思いっきり引っ張り出した。
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