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「先輩、早く」
靴を揃えている僕に、僕の二の腕を引っ張り、動作を止めさせ家に上げる。引き摺られるまま連れてこられた、佐野の家。久し振りのせいか、廊下を歩く足がもたつく。
二階の左側。
後に着いて、足を踏み入れる。忌まわしい部屋。佐野の世界に迷い込んでしまう空間。
部屋の中は、何も変わってなかった。僕の良く知らない、プレミアがついているらしいジャケットが、絵代わりに何枚も飾られている。
インディーズやらって説明されたけど、サッパリ僕には価値がわからない。ただ、数は前よりいくらか増えてるみたいだ。床には佐野愛用のギターが横たわっている。
飾られているフィギュアやオブジェも、全く価値は解らない。
佐野の脳内の様な、乱雑にみえて組み込まれた独特の世界に、いつも視線が戸惑う。ギターを踏まないように避けてゆっくりと歩いていると、佐野に凄い力で引っ張られた。
「イタイッ」
思わず声が漏れる。僕の痛がる顔を見て、佐野は少し笑った。佐野は、僕をベッドに引きずり込んだ。
[カチャリ]
ドアの前に立った佐野が、後ろ手で部屋の鍵を閉めた。
僕は観念した。これが佐野の戦闘合図……暫くすると僕の目の前は、佐野の影で覆われた。
「先輩漏らした所、見せて」
佐野が僕のベルトに手をかけた。
「漏らしたって……違う……」
意地悪い顔で、人の傷つくことを平気で言う。
僕は抵抗したけれど、力に負けて佐野の手でズボンを引き摺り下ろされた。濡れて気持ちが悪かった所はもう乾いている。けれど感触から染みになっているのが自分でも分る。
佐野は手を触れてこず、僕の下着姿を見続けている。僕は視線に耐え兼ねて顔を逸らした。
「見られるだけでも感じるの?」
佐野は僕の顎を掴んで、上を向かせた。佐野の目が嬉々としている。僕は目を伏せた。
「これって、まだ全部出してないんでしょ?」
佐野に答えを促される。無視なんて通用しない。僕は、恥を忍んで頷いた。そう、こんなに染みを作ったって、僕は最後までイッて無い……あんな満員電車で感じてしまった自分に、嫌悪感が込み上げる。
「このままで出したらどうなるのかな?」
顎に手を置いて、佐野が楽しそうにほくそえんだ。
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