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私は今年就職して、半年以上経ってもう冬も近い。
高2から付き合ってる彼氏は、大学3年生。
よく聞く話だけど、学生の彼が幼く見えて来ている。
彼がいくら受験戦争を勝ち抜いた身とはいえ、会社にいるのは、その上に就職戦線を勝ち抜いた大人達だ。そして日々社内で、社外で、毎日真剣勝負をしている。
学生の頃も先輩の余裕がカッコ良く見えたけど、それとは圧倒的に違う。
学生と社会人の差はとても大きい。
こんな事を考えるのは、取引先の営業さんからお付き合いを申し込まれたのがきっかけだ。
私の仕事は受付で会社の顔ともなる為、身綺麗にして愛想良くしている。新入社員をからかいたがる男性も少なくはなく、冗談へ返しも随分慣れた。
告白してくれた人は、私が努力している姿を見て、真面目に想いを伝えてくれた。
彼氏は就職活動で忙しいのかイライラしているのか慣れなのか、最近私への接し方がぞんざいな気がする。
悲しくて寂しくて1人で泣く日も増えた。
もう潮時かな、と思っていた。
このタイミングでの告白で、気持ちが揺らいでいる。
そんなある日、うちの会社に彼がやってきた。
就職活動の一環だった。
彼はスーツを着て、生き生きとした緊張感を持った表情をしている。久しぶりに見た。前に見たのは…
そうだ、やりたい事があると話してくれた時の、凛々しくて輝きに満ちた顔ーーー
思い出した。この会社は彼の第一志望だ。
片や私は、彼の志望している会社という理由だけでここを受けたんだ。そしてたまたま受付で採用された。
どうして、忘れてしまっていたんだろう。
思った以上に受付も大変で、人の顔と名前と会社や立場などを覚えることや、面倒な絡み方をしてくる取引先の偉い人への対応も、精神的にキツかった。
私は彼に優しく出来ていた……?
同じ歳の私達は別の立場で、別の経験を積んでいて、成長している場所が違うだけなのに。
そんなことにも気がつかないで、一生懸命に学んでいる彼に優しくも出来なくて、どうして彼だけが幼いと思えたんだろう。
自分が恥ずかしい。
今社内にいる彼がここで精一杯の力を発揮して来られますように。
そう願ったら、彼がどれだけの努力をしてきていたか、思い出されてきた。
もう、迷わない。
彼の今日のあの表情は、先輩達にだって負けない、男の顔だった。
そんな彼を支えたいと思っていた気持ちを、思い出したからーーー
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