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「それでね、彼氏が退院のお祝いに好きなバッグを買ってくれるって。ありさ早く顔の傷治して、めっちゃきれいになって帰るからね~って」
浮かれたように話す、ありさの声が病室内に響く。
「いいなぁー。ありさの彼氏はお金持ちで」
本気で羨んでいるような、お友だちの声。
ありさの彼氏って、何歳なのだろう?
「普通のサラリーマンだけどね。梨乃は大翔君とどうなったの?」
「どうって、まだ三回しか会ってないし。でも、この間キスしてもいい?って聞かれてビビッたぁ〜」
「 まだキスもしてないの。ありさなんて一回目のデートで本番までいったよ~」
「えーっ、マジで。そっかぁ、でも痛いんでしょ? それって……」
「はじめての時はね、めっちゃ痛いよぉ。もう早く終われ~って感じ。全然、気持ちよくない。でも今の彼氏はおっちゃんだから超やさしくしてくれる」
とても小学生に聞かせられるような話ではない。
しかも間違いなく犯罪だ。
「ありさちゃん! お友達とはデイルームのほうで話して!」
仕切られていたありさのカーテンを少し開けて、きつい口調で注意した。
スチールの椅子に座っていた三人のお友達が、ムスッとして私をにらみつけた。
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