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店内に僕以外の客はいない。
会話をしている客でもいればかき消されてしまいそうなジャズの音色も、心地よく耳に入ってくる。
スマホを開くと母からのメッセージ通知が届いていた。
『今日は遅くなるから冷蔵庫のごはん温めて食べてね』
了解…と打って送信ボタンを押す。
前の画面に戻ると、クラスのトークグループの通知がひっきりなしに数を増やしていた。
中を覗くと
『和希、今日も休み?』
『見ても返事しないんじゃない』
『啓人くんたちが余計なこと言うからでしょ』
『出た!委員長、うぜー』
『あれ、全員既読になってない?和希ー!』
一通り履歴を見た後、何もリアクションを返さずにスマホを閉じた。
「はい、お待たせ」
振り返ると、笑顔のマスターがトーストの皿とコーヒーカップをテーブルに置いた。
「あっ、ありがとうございます」
「いいえ。ごゆっくり」
そう言って去っていくマスターの背中を追った後、僕はふーっとため息をついて砂糖を入れたカフェオレを一口すすった。
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