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僕が学校に行かなくなったのは本当に些細なことが原因だった。
「なぁ、和希。お前、養子って本当?」
友人の啓人と竜也のその問いに僕は、一瞬戸惑ったけれど、別にそれ自体はたいした出来事ではなかった。
「あぁ、本当だよ。5歳の時に、今の両親に引き取られた」
「へー、そうなんだ」
「なんか、ドラマみてーだな。」
二人はさしてその事を気にするそぶりもなく、その話はそこで終わったはずだった。
むしろ僕は、仲の良かった友人たちに“あえてとは言わないけれど”秘密にしていたことを打ち明けられたことで、どこかすっきりすらしていた。
しかし、その日の夜、僕の心はいっきにどん底に突き落とされた。
何気なく開いたスマホの画面でクラスのグループトーク通知を見た僕はその目を疑った。
『啓人くんたち、昼休みのあれはないと思う』
『あれ?何の事?』
『和希くんの家の話。デリカシーなさすぎ』
委員長が、啓人たちにかみついたのだ。
その言葉を受けて何も知らなかったクラスメートたちが
『何の話?』
と次々に話に参加し始めた。
『啓人たちが悪い』
『いや、こんなところでそんな話をする委員長が悪い』
僕の言葉を待つことなく次々にあふれ出る言葉に耐えかねた僕は、そのままスマホを閉じた。
それからも何度か学校に顔は出しているけれど、周りの視線や、腫れ物に触るような態度に居心地の悪さを感じることが増えていって、少しずつ足が遠ざかって行った。
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