仮面《かめん》病《びょう》

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人は、人格が全てを形成している。 本性と人格は似ていて非なるものだ。 そして、本性とは本人も自覚していないことが多く、ここでの本性とは本来の意味とは違い、その人の本当の姿であり、素の状態という訳では無い。 何も考えず過ごしている時の自分が本性という訳では無いのだ。 自覚していないことが多い理由、それは人格で隠されているからだ。 科学者や医学者などは皆が持つ本性を隠す、その人格を『仮面人格』と呼んだ。 仮面人格は記憶、行動傾向、思考回路。 その全てが詰まった仮面のようなものだと考えられている。 本性はその仮面人格に素顔を隠す仮面のように押さえつけられ隠されているのだ。 大抵の人…いや、今までは仮面人格が剥がれ落ち、本性が出る事は少なかった。 しかし、情報化社会となった現代社会で急激に本性が出てきてしまう人が現れ始めた。 原因は自己嫌悪や変わりたいと強く思う事によるストレスだ。 それにより、変わるために仮面人格が剥がれ落ちてしまう。 それだけなら本性が出るだけで然程問題無いのだが、上記で述べた通り、仮面人格には記憶までセットで詰まった仮面のようなものなのだ。 剥がれ落ちてしまえば今迄の記憶全てが消えてしまい、その人は別人となり死んでしまうのと同じなのだ。 第二の人生を1からスタートするようなもので、親すら初めは分からずに記憶喪失で知らない場所に連れて行かれたようなものになる。 この現象を“仮面病”と医学者達は名付けた。 仮面病は最近発病患者が急激に増えた病気で、発病すると、大抵が個人差はあるが1週間程度で記憶が全て抹消され、本性の人格へと移り変わる為、初めての発病を確認してから数年と経った今も治療法や治療薬が未だに無い。 当初は気持ち悪がられた仮面病も今は存在が広まり、世界中の殆どの人に認知されるようになった。
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