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「左に曲がります、ご注意下さい」  トラックが喋る。ブロロン、ブロロンと、聞くだけで、ガスの強烈な臭いを想像出来る音を唸らせながら、僕の目の前をお喋りしながら通り過ぎる。  この中途半端な都会の、ひどくよく晴れた空。その下で、冬の肌寒いバス停に立ち尽くしている僕。午後四時前の現在、僕は下校のために、バスを使い駅まで向かう予定だ。僕の登下校と言えば、バスのブロロンという音と、電車のガタタンという音に食い潰されていくだけで、ずっと長い間とっても無機質なものだった。おかげで、この舌はもうなんの味も感知しないような気がしてくる。
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