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そんな中で、部活もバイトも興味のないしがない男子高校生の僕にも、少し気になる女の子がいた。冴えない容姿や性格の自分にとって、恋なんて無縁だと思っていたはずなのに、僕はうっかり彼女に惹かれつつあったのだ。僕は左側の女子高生のことを横目でちらりと見やる。
その彼女とは、朝と帰りによくバスが一緒になるだけの間柄である。彼女も電車通学らしく、最寄りの駅は知らないが、駅のホームで見かけると同じ方向の電車に乗ることが多い。
僕は、名前も知らない彼女をバス停で見かけるたび、そのぼんやりとした面持ちで風に揺られて突っ立っている様がどこか引っかかり、次第に彼女のことを気に留めるようになった。そのうち彼女のその揺られる横顔の透明さとか、清潔感に惹かれて、いつの間にか彼女のことが頭にこびり付いて取れなくなった。これが恋か、と気が付いたのは最近のことだ。僕は彼女に恋をしているんだ、そう気が付いてからも変わらず、僕は彼女と話したこともなければ、目も合わせたことがないままだった。それに、彼女はきっと、僕の存在すら知らない。
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