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彼女は僕と同じ高校の制服をきていて、真っ黒なストレートの髪をぐるぐる巻きのマフラーの中に突っ込んでいた。教室で大きい声を上げ騒ぎ立てる女子より、少し見た目は地味である。派手な化粧もしなければ、スカート丈も膝小僧が見え隠れしていて控えめだった。だけど僕は、彼女のくりくりとした印象的な瞳と、少し姿勢が悪いところがお気に入りだった。
かすかに音漏れしているイヤホンからはどんなメロディが流れているのか、知ることは出来ない。茶色のチェック柄のマフラーの生地は薄めで、そんな布切れで寒さの何が防げるというのか疑問に思う。おもむろにポケットから取り出す、桃色のカバーの携帯電話。いったい誰と連絡を取るのだろうか。再度、ポケットの中をまさぐると、彼女はその小さい顔を覆う白いマスクを下にずり下げて、のど飴らしきものを唇にはさむ。そして直ぐにマスクを元の位置に戻した。そのために、そのはさまれただけののど飴がどのようにして処理されているのかは隠されてしまう。彼女はまた自分の手の甲で頬をこすった。変な癖だな、と僕は横目でみる。真っ直ぐ前を向いているフリをして、となりの彼女を観察するのがとにかく好きだった。
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