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 こういう日常に幸せを見出している僕は、はたから見たらほとんどストーカーのようなものだと、気味悪がられると思う。決して、他人にやすやすと話せるような、褒められたことではない。  けれど、僕は、どうしてもそれがとても幸せだった。毎日、朝に家を出て彼女のことを思い出しながら、バス停で見つけた時には嬉しく思ったり、放課後に友達に遊びに誘われると、帰り道の彼女の姿を見ることが出来ないなあなんてちょっと渋ったりとか、そんなことがひどく楽しかったのだ。もちろんあわよくば付き合いたいとか考えていた。僕だって一応男子高校生なのだから、そういった色欲なんて捨てるほどあるのだ。例えば、なんでもいいけれど、言葉を聞いてみたい。どんなふうに、話をするのかとか、もっと知りたい。夢のようだけれど、彼女に触れてみたい。頭の中で、彼女が僕に笑いかけるというそんな妄想をふっと思い浮かべては、恥ずかしいとあわてて消す。いくら彼女の事が好きでも、どうせ僕はビビりでチキンでモテない野郎だ、なんて、自嘲を六限目の授業中の自分に浴びせる。ああ、今日はいつも遊びに誘ってくる友達にはバイトがあるから、帰り道に彼女の姿を見れるかもしれない。
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