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僕が叫んだのと同時に、四宮さんの背後から不良のリーダーが殴りかかってきた。
利き腕である右腕を大きく振りかぶってくるソレは僕が中学時代から殴られてきた拳。僕には避けることができなかった。
それが今、僕の体に入った四宮さんに襲いかかっている。体は僕のだ。だから傷つくのは別にいい。けど、その殴られた時の痛みは?そのまま四宮さんに伝わるのだろうか?
だとしたら…嫌だ。
「やめて!!」
止めたくても止められなくて。僕はただそう言うことしかできない。
もし、僕に力があればなんとかできたかもしれないのに。でも、ここで下手にでたらこの体は四宮さんのもので傷ができたらそれこそ申し訳ない。
じゃあどうすればいいんだと僕は絶望することしかできない。そのままいつもの癖できつくつぶってしまう瞳。続く打撃音に、あぁ僕は何もできないんだと思い知った。
「イテェ!!離せ!!」
しかし、聞こえてきたのは不良の悲鳴に近い声。不思議に思った僕が恐る恐る目を開けると想像していない世界が広がっていた。
「このっなんで、葵にっこんな力がっ」
「力なんか全然入れてないけど?」
不良の右手を捻り上げ、綺麗に微笑む四宮さんの姿がそこにはあった。
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