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愛する人と、一生の誓いを立てて祝福される。
そんな、普通の幸福を夢見ても、私達には叶えようもない。
決して祝福されない私達は、幸せになれないのでしょうか。
ぼうっと見つめた画面の中。幸せそうに真っ白の衣装に身を包んだ二人が笑っているのを見つめる。やがてfinと映しだされ真っ暗になった画面に、反射した自分の姿を見て思う。
フィクションの中なら、私達は幸せになれるのに。
どうしようもない思いを振り切るようにぐっと身体を伸ばした私の頭に、ぽんと温かな手のひらが乗せられた。
「ユキ、映画終わった?」
「うん。微妙だったよ、瀬名」
「見たことも無いようなタイトルのものばっかりユキは借りてくるから」
そう言って笑った瀬名は、私の恋人。もう5年は一緒にいる。
優しくて、勇気があって、ちょっと大胆。でもそこがかっこいい。かっこいいだけじゃなくて、たまに甘えん坊なところがかわいい、私の“彼女”。
「瀬名ぁ…」
コーヒーを持って立つ瀬名にソファに座ったまま抱きつくと、困ったように瀬名は微笑んで私の頭を空いた手で撫でてくれる。
「もう、ユキさんってばお疲れですか?」
「そうなんです。だから瀬名パワー補充中なんです」
あったかい、落ち着く匂い。そっと撫でてくれる手。優しい笑顔も、声も、ぜんぶ好き。
好きじゃ足りないくらい、大好き。きっとこれが愛しいってことなんだろうな。
でも、だからこそ、胸の中が痛くて、苦しい。
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