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カラン、とカフェの扉に取り付けられた鐘が小気味よく鳴った。
「いらっしゃいませ。二名様ですね、こちらのお席へどうぞ」
ニッコリと営業スマイルを浮かべて出迎えたチビッ子店員を、五百旗頭は苦々しげに見据えた。
「いや~たまには、外食するのもいいですよね!」
五百旗頭の心中などつゆ知らず、能天気な顔で声を発したのは職場の後輩である三笠だ。
三笠に無理やり連れてこられなければ、五百旗頭がこのカフェに進んで足を運ぶことなど、まずない。
居候である七々貴に連れられてくることもあるにはあるが、一人では絶対に行かない。
今日は、どうしてもとしつこく食い下がってきた三笠に、おごる気はないからな、と牽制しておいてから渋々つきあってやってきたのだ。
仏頂面の五百旗頭を前にしながらも、まったく臆した様子のない三笠が得意気に語る。
「こんなとこに、こんないい感じのカフェあるなんて、知ってましたか五百旗頭さん!? 俺、最近見つけて、絶対今度五百旗頭さん連れてこよう、って決めてたんです!」
余計なお世話だ一人で行け、と不機嫌さを隠そうともせず、五百旗頭の表情はますます険しくなる。
何が楽しくて男二人でカフェに入らなければならない。
三笠が町はずれへと足を向けた時から、嫌な予感はしていたが、よりにもよって、この、カフェとは。
テンションの高い三笠に対して、五百旗頭のテンションは下がる一方だった。
案内されたテーブル席に腰かけ、三笠はメニューを手に取った。
「甘いものメインらしいけど、ここのメシは結構いけますよ! 五百旗頭さん、どれにしますか?」
ゆっくりとしたいところだが、昼休憩の時間は限られているので、三笠はさっさと自分の頼むものを決めたようだ。
「…………おまえと同じでいい」
五百旗頭としては、できるならば早くここから立ち去りたい。
別に、このカフェが嫌いというわけではない。
ちょっと曲者である居候がお気に入りの店だけあって、店の雰囲気は嫌いじゃないし、料理も悪くない。
問題なのは、ここの店員たちである。
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