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「おーい、店員さん! これ2つ、量多めで」
「日替わり桜のランチプレート、量多めで二つ、ですね。かしこまりました」
営業スマイルで対応してくる憎たらしいチビッ子店員を、五百旗頭は早く視界から遠ざけたかった。
五百旗頭とチビッ子店員こと円花が、顔見知りであることも、このカフェの店員に、たびたび厄介ごとの後始末を頼まれたりしていることも、三笠は知らないし、五百旗頭も話したりはしない。
さらには、今のように円花も五百旗頭のことを知らない風に振舞うので、五百旗頭も円花のことを知らないヤツとして無視する。
「ちょっ、五百旗頭さん、どうしたんですか? 顔怖いですよ」
「……うるせぇ。生まれつきだ」
チラリと見渡したところ、背の高い相棒は見当たらない。
最近新しい店員が増えたらしい、という話を居候から聞いたが、今はチビッ子店員と、派手な髪色のチャラそうな店員しか見当たらない。
昼時とはいえ、それほど混雑してはいないためか、今は二人だけで十分対応可能なのだろう。
チビッ子店員がオーダーを告げると、派手な髪色店員が奥へと引っ込んでいくのが見えた。
「どうですここ、隠れた名店って感じがしません? 場所はちょっと遠くてわかりにくいけど、店は広いし綺麗だし、料理は美味い! 俺の中で今一番のお気に入りの店っす!」
どうでもいい三笠の話を聞き流しながら適当に相槌を打っていたら、しばらくして料理が運ばれてきた。
てっきり、またチビッ子店員がくるのかと身構えていたのだが、運んできたのは初めて見る新顔の店員だった。
「……お待たせいたしました。桜のランチプレートです。ごゆっくりどうぞ」
仏頂面の短い黒髪の店員は、不愛想に淡々と告げるとすぐに去っていく。
居候が言っていた新しい店員の一人だろう。
まったく愛想のない点は接客業には向いてなさそうだが、胡散臭い笑顔を向けられるよりは、まぁマシだなと五百旗頭は思った。
『いただきます』
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