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「ひいい、この人にも本を読まれていたと思うと恥ずかしすぎるっ」
頭を抱えて、諌山は真っ赤になって固まった。
確かに彼の言う通りだ。オメガ男性にはものはあるが、男性としての生殖機能はほとんどないとされている。
「もしご迷惑でなければ、今度、色紙にサイン頂いてもよろしいですか?」
「ええ、構いませんよ。私で良ければ……」
「やった! ありがとうございます、諌山様」
執事の問いに諌山が承諾を返すと、直人が喜んだ。司が興味たっぷりに如月を見上げる。
「美羽お姉ちゃんのご本ってどんななの?」
「うーん、司にはまだ早いかなあ」
「十八歳になったら見せてあげるね」
如月と諌山が苦笑すると、司が如月の腕を揺さぶる。
「えーっ、ずるいーっ。ママ、僕、読みたい!」
「ダーメッ」
「大人ばっかりずるい」
「うんうん、でもこれは駄目」
きっぱり返すうちに、司が本格的に泣き始めた。見かねたのか、諌山が慌てて口を挟む。
「えっと、司君。今度、見せてあげるね?」
「ちょっと美羽ちゃん……」
「子ども向けの本を作るので、それを」
「ああ、そういうこと。器用ね」
ひそひそと返ってきた言葉に、如月は素直に感心した。
「約束だからね?」
「うん、約束」
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