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カイルの問いに、吟遊詩人は目を丸くした。
「よくご存知で。ええ、かの巫女姫の名はフェリシア。うるわしき金の乙女」
そして、魔王の最愛。
幌馬車の上に目を向けると、白い羽がひらめくのが見えた。
毒の魔王を愛した巫女姫は、愛をくさびとして魔王をあの土地に縫い付けて、毒で死んだ。死んだ後も離れがたいとずっと傍にいて、魔王となり汚れた魂が浄化される千年の間、ずっと見守ってくれていた。
人間に転生した後は、守護天使として傍にいる。
『どうしてあの地に行ってしまうの? また魂が穢れたら困るのに。カイルのばーか』
男の天使に生まれ変わったフェリシアは、ぶつぶつと文句を言っている。カイルがこの地に来るのを嫌がって、あの手この手で邪魔していたが、カイルのほうが一枚上手だった。
この子どもっぽいところ、千年経っても変わらない。
少しは成長しないのかと呆れてしまうが、この純粋さがフェリシアの良いところでもあった。
(いや、今は天使のフェンだったか)
カイルが見えているとは気付いていないようだから、カイルも知らない振りをしているのだが、フェンは暇なようでよく話しかけてくるし、独り言も多い。
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