4 特別編 十子さんの場合

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「へえ。烏のいるお店ですかぁ。面白いですねぇ。」 「・・・胡散臭い。あの母の守備範囲かもしれん。腹立たしい。」 十子さんは、烏から何事か感じ取ったらしく、額に縦しわを刻んだ。 そして、カラカラと店の戸をあけた。 「いらっしゃいませ。」 カウンターの中から、穏やかな声がかけられる。 十子さんは、店主を一瞥した。 年の頃は、30代半ばか。 作務衣姿で、清潔感がある。 店内はカウンター席が7席ほど。 二人掛けのテーブル席が二つ。 カウンターは、常連客らしい男女が3人。 「お好きな席へどうぞ。」 「うむ。」 高見がテーブル席の椅子を引きかけたが、十子さんはカウンター席に座った。
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